WordPressの後継を名乗る「EmDash」、実際どうなの?触って確かめてみた

「WordPressの精神的後継」なんて名乗るCMSが出てきたと聞いたら、さすがに気になりますよね。しかも作ったのはCloudflare。2026年4月1日に発表されたばかりの新顔ですが、GitHubのスターはすでに11,000超え。

この記事では、EmDashが何者なのか、WordPressと何が違うのか、そして実際に触ってみた所感をまとめます。

EmDashってそもそも何?

EmDashは、Cloudflareが公開したオープンソースのCMSです。フロントエンドにはコンテンツ主導サイト向けのフレームワークAstroを採用し、全体がTypeScriptで書かれています。WordPressのコードは一切流用しておらず、ゼロから設計されたうえで、MITライセンスで公開されています。

2026年4月の発表時点ではv0.1.0のベータ版という位置づけでしたが、開発ペースはかなり速く、Playgroundで実際に確認したところ現在は v0.28.1 まで進んでいました。3ヶ月足らずで30近いバージョンを重ねている計算で、止まっているプロジェクトではなさそうです。エイプリールフールネタじゃなくてよかった。(2026年4月1日に発表)

なぜ今、WordPressの後継が必要なのか

WordPressは今年でプロジェクト開始から23周年。インターネット全体の4割以上を支える成功したソフトウェアですが、Cloudflareが問題視しているのは主にプラグインのセキュリティです。WordPressサイトのセキュリティ問題の96%はプラグインに起因するというPatchstackの調査もあり、2025年には過去2年分を上回る深刻な脆弱性が報告されました。

原因は設計にあります。WordPressプラグインはPHPスクリプトとしてコアに直接フックし、データベースやファイルシステムに事実上フルアクセスできてしまいます。隔離の仕組みがないため、1つの脆弱なプラグインがサイト全体を危険にさらしかねません。

また一度作ってあとは放置。といったサイトも数多く存在し、常にアップデートし管理し続ける必要があります。

EmDashはここを設計から作り直しました。各プラグインはCloudflareのDynamic Worker上でサンドボックス化され、マニフェストで宣言した権限(read:contentemail:sendなど)以外は一切実行できません。インストール時点で「このプラグインが何をできるか」が明確になる、という発想です。

WordPressとEmDash、何が違う?

項目WordPressEmDash
言語PHPTypeScript
フロントエンドテーマ(PHPテンプレート)Astro
プラグインの実行環境コアと同一プロセス、フルアクセスサンドボックス化されたWorker、宣言した権限のみ
コンテンツの保存形式HTML+メタデータPortable Text(構造化JSON)
ホスティング常時稼働のサーバーが必要サーバーレス(ゼロスケール対応)
AIエージェント連携標準では非対応MCPサーバー・CLI・エージェント向けスキルを標準搭載
ライセンスGPLMIT
開発ステージ成熟(23年目)ベータ(2026年4月〜、現在v0.28.1)

コンテンツの保存形式も地味に大きな違いです。WordPressはリッチテキストをHTMLとして保存し、メタデータをコメントに埋め込む方式ですが、EmDashはPortable Textという構造化JSONで持ちます。同じコンテンツをWebページやモバイルアプリ、メール本文にも、パースなしでそのまま流用できる設計です。

実際に触ってみる:Playgroundの使い勝手をチェック

インストール不要でEmDashの雰囲気を確かめられるのがEmDash Playgroundです。アクセスすると、まず次のようなセットアップ画面が表示されます。

  1. Creating your playground…(作成中)
  2. Setting up database(データベース準備中)
  3. Loading demo content(デモコンテンツを読み込み中)
  4. Almost ready(もうすぐ完了)

サインアップやログインは一切不要。数十秒待つとダミーのブログサイト「My Blog」と管理画面がまるごと1つ表示されます。

サイトタイトルを「テストブログ」としたので名前が変更されました。
表示直後の画面

管理画面に入ると、見た目はかなりWordPressに寄せてきている印象です。ダッシュボードには下書き・メディアファイル・ユーザー数のサマリーと、Pages/Postsの件数、直近の更新履歴(サンプル記事のタイトルが並ぶ「最近のアクティビティ」欄)が表示され、WordPress育ちなら迷わず状況を把握できる作りです。

EmDash画面下部表示バー

画面下部には「PLAYGROUND」のバッジ(おそらくユーザ名?)と「41m remaining」のようなカウントダウン、そして自分の環境としてデプロイするための「Deploy your own」ボタンが常時表示されています。制限時間がありますが、時間内であれば気兼ねなく壊して試せるのは良い設計だと感じました。

差を感じるのはサイドバーの項目の多さです。コンテンツ(Pages・Posts・メディア)に加えて、コメント・メニュー・リダイレクト・ウィジェット・セクション・Categories・Tags・署名(Signature)まで管理系の項目がずらりと並び、さらに管理者向けにコンテンツタイプの定義・Byline Schema・ユーザー・プラグイン・インポートまで揃っています。

特にリダイレクトやByline Schema(記事の著者情報の構造化スキーマ)、コンテンツタイプが最初から標準搭載なのは地味に効いてきます。WordPressだと専用プラグインを入れて初めて手に入る機能が、素の状態で用意されている格好です。

もう一つ気づいたのは、管理画面がそのまま日本語で表示されたことです。ブラウザの言語設定を見てローカライズしてくれているようで、かなり自然な日本語UIになっていました。公開直後の4月時点ではローカライズされていなかったはずなので久しぶりに触ってみてびっくりです。
ただ部分的にローカライズが当たっていない部分があるので注意が必要です。

おそらく投稿に紐づく投稿者の役職やSNSアカウントなどカスタムフィールドを作成できるページ

Playgroundで感触をつかんだあとにローカルで動かしたい場合は、ターミナルで以下を実行するだけです。

npm create emdash@latest

対話形式のセットアップが進み、ローカルのSQLiteデータベースを使ったEmDash環境が立ち上がります。Cloudflareアカウントは不要で、管理画面は起動後に /_emdash/admin へアクセスすると開きます。

一つ注意点として、プラグインをサンドボックス実行するDynamic Workersは現状、Cloudflareの有料アカウント(月5ドル〜)でのみ利用可能です。無料アカウントで試す場合は、設定ファイルwrangler.jsoncworker_loadersの項目をコメントアウトしてプラグイン機能を無効化する必要があります。「サンドボックス化されたプラグイン」がEmDash最大の売りなので、そこを本気で検証したいなら有料プランへの切り替えは避けられません。Playgroundで雰囲気をつかむだけなら、この制約は気にしなくて大丈夫です。

AIエージェントとの連携が売り

EmDashは「エージェントに使われること」を前提に設計されています。全インスタンスにMCPサーバーが組み込まれており、ClaudeやChatGPTなどのMCP対応ツールから、記事の作成・公開・スキーマ変更などを自然言語の指示で実行できます。CLIもJSON出力に対応していて、プラグイン開発やWordPressからの移行手順を説明する「エージェントスキル」も同梱されています。

WordPressの資産を引き継ぎたい場合は、WXRファイルのエクスポートや専用のEmDash Exporterプラグインを使ったインポートにも対応しています。投稿・固定ページ・メディア・タクソノミーはそのまま移行できますが、テーマとプラグインはEmDash向けに作り直しが必要です。

現時点での実態は?

Yoastの創業者Joost de Valk氏が自身のサイトをEmDashへの移行に着手したことが話題になるなど、プラグインのセキュリティモデルへの評価は好意的な声が目立ちます。一方で、複数の技術ブログが指摘しているのはエコシステムの薄さです。テーマもプラグインもまだ数が少なく、WordPressのような「困ったらプラグイン一つで解決」という選択肢の豊富さはまだありません。

つまり、今すぐ本番サイトをEmDashに乗り換える段階ではなく、「次世代CMSの方向性を体験しておく」くらいの温度感がちょうど良さそうです。とはいえベータとはいえ機能はかなり作り込まれているので、Astroでの開発経験がある人や、WordPressのプラグイン管理に疲れている人は、Playgroundだけでも触ってみる価値はあります。

まとめ

  • EmDashはCloudflare製、Astroベースのオープンソース型TypeScript CMS
  • 最大の特徴はプラグインのサンドボックス実行によるセキュリティ強化
  • MCPサーバー標準搭載でAIエージェントとの連携を前提に設計されている
  • 2026年4月にベータ公開されたばかりで、エコシステムはまだこれから
  • お試しはPlaygroundnpm create emdash@latestが手軽

まずはPlaygroundを触って、WordPressとの感触の違いを体感してみるのがおすすめです。